24歳でがんになった。~Return Match~

24歳にして突然の上咽頭癌ステージ4の宣告。その時私は〝がん患者〟になった。

がん専門病院、いざ初診。

2019/11/01

ついに関東のがん専門病院、初診の日。

紹介元からは紹介状、生検に使った私の肉片の入ったプラパラート、撮影してきた造影CT、PET等の画像が入ったCDを持ち込んだ。

 

朝方の予約だったため、特に待つこともなく診察室に呼ばれた。

 

これから主治医となる頭頸部内科の先生は目が合うとニコッと笑い、本題に入る前に私も関西に住んでいたのです。今日はどうやって来られたのですか?なんて、世間話をして下さる気さくな先生だった。

 

持ち込んだ情報はもちろん目を通して下さったようで、モニタには私のCTの写真が表示されていた。

その後、鼻からファイバースコープを突っ込んでの観察、頸部リンパ節の触診をしてから先生は、「紹介元の言う様に、ステージⅡでいいと思いますが、正直これから行っていく追加の検査でステージⅣになる可能性もあります。」と言った。

まだ情報が出揃っていないのだからそれは当然だ。

信頼できる先生だと思った、治療において「絶対に」なんて言う医師は逆に怖い。

100%が無い事を、理系は知っている。

 

「ご希望であれば当院で治療します。」

もし断られたら、なんてこともやっぱり考えていたのでホッとした。

お願いしますと即答すると、先生は今後の治療について2つのパターンを示してくれた。

 

1つ目は、ステージⅢ未満の場合で、放射線治療抗癌剤を並行して2ヶ月の治療を行うパターン。

2つ目はステージⅢ以上の場合で、上記のパターンに先行して単独の抗がん剤治療を2ヶ月行う計4ヶ月のパターン。

 

つまり、最終的なステージが決まらないとそれは定まらないと言う事であった。

それは全ての検査が終わりった後の合同カンファでステージは決まると言う事だった。

 

そしてどちらのパターンでも丸一週間後の11/8に治療は始まると言う事だった。 

 

説明を終えた後、先生は電子カルテのPCと睨めっこして、あちこちに電話をかけてくれた。

「そんなん待てませんよ‼︎」「今日してください今日‼︎」

私の前ではニコニコとしていて優しい物腰の先生なのに、電話口では勢いよく押していた。頼れる先生だなぁと思った。

 

「そしたら、頑張ってきてください‼︎」

先生に見送られ診察室を出ると、優しそうな看護師さんが待っていてくれていた。

精子凍結保存の説明に来ました。」この病院は気が利くなぁなんて思った。

 

抗癌剤を使用する事、今回放射線治療を行う部位を考えれば、不妊になる可能性がまぁまぁあるらしく、バックアップとして精子凍結保存を勧めてもらった。(ちなみに保険外診療)詳しくは以下参照。

https://ganjoho.jp/public/dia_tre/diagnosis/fertility/fertility_01.html

 

未婚どころか恋人もいないので、全くそんな予定はないが、後になって置いとけば良かったと思うのも嫌なのでしておきたいと答えた。

 

看護師さんは、若いので当然‼︎と言ってくれたが、一週間後には治療が始まる事、来週も検査がいくつか入っている事を考えれば、もしかしてタイミング的に難しいかもと言いながら、精子凍結保存を行っている大学病院の方へ電話をかけてくれた。

 

しばらくして「バッチリ、明日の土曜日いけるよ‼︎土曜日もしてるの知らなかったなぁ」と笑顔で顔を上げた。

自分のことの様な笑顔が眩しい。

がん治療の方が優先になるのは当然なので、正直出来なかかったら仕方がないなぁと思っていたので嬉しかった。

 

看護師さんは、「若い女性は特に、子供を作る(事が出来る様にしておく)事ががん治療よりも優先される事があって大変なの。治療が1ヶ月とかの単位で治療が遅れる事は病院としては止めたいし、でもママになりたい気持ちもわかるし、難しいのよね。」と言っていた。

その話を聞いて生きるか死ぬかの瀬戸際に立った時、子孫を残したいと思うのは動物的本能かなぁなんて思ったりした。

 

 

看護師さんと別れた後は検体検査、これは健康診断でやる様な事ばかりで特に真新しさはない。

次に生理検査。肺活量と心電図を測定したのだが、検査技師さんがどうも年が近そうな女性。まぁ声を掛けたくなるのが男ってもの。聞けば同い年で、「個室だから喋ってても大丈夫」と言ってくれたのでちょっと喋った。

 

その後はX線撮影(いわゆるレントゲン)、胸と歯のパノラマを撮影した。

薄暗ーい昔ながらの撮影室。仕事も離れると寂しくなるもんで、早く現場に戻りたいなぁなんて思った。

 

そしてお待ちかねの全身造影CT。

注射担当の看護師さんと世間話をしていると、なんと共通の知り合いがいた。

自分の元々の活動エリアと物理的な距離はかなり離れているのに、この業界はあまりにも狭いなぁと思った。

 

造影用のルートを確保してもらい、順番待ち…

流石に大きな病院だけあって様々な所に工夫がある。

患者になっても自分は放射線技師、学ぶべき所はいくらでもある。

待っている間にもキョロキョロと工夫は盗ませてもらう。

 

 

待機室で待っていると技師さんが呼びにきてくれた。

「〇〇の技師さんらしいじゃないですか、よろしくお願いします。」

どこでどんな仕事をしているかと言うのは、患者がどこかで名乗れば大体カルテに書いてある。僕の場合持ってきた紹介状にもう書いてあった。

 

気さくな技師さんで、色々と同業者ならではの説明を交えながら検査をしてくれたのでとても勉強になった。

 

その後、放射線治療科の先生の診察と歯科の診察。

なぜ歯科の診察があるのかと言えば頭頸部癌への放射線治療の場合、二次的な障害が起こる事が予想されるから。説明は以下がわかりやすい。

https://ganjoho.jp/med_pro/med_info/dental/koshukai_text2.html

 

検査、診察を終えると既に17時30分頃で、通常であれば外来は終わっている様だったが主治医の先生は嫌な顔一つせず、「お疲れ様でした、これから一緒にやって行きましょう‼︎」と言って下さった。 

 

病院を後にしての帰り道、駅を出てラーメン屋で親父と晩ご飯を食べた。

造影CTがあり昼ごはんを食べるタイミングが無かった為、その日のラーメンは格別だった。

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その日は金曜日、駅前は機嫌の良いスーツ姿の人々で賑わっていた。

楽しそうな人々を横目に、私は明日の「精子凍結保存」について、その病院に猥褻図書はあるのかなんてどうでも良い事を考えながら帰路を歩いた。

 

 

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