24歳でがんになった。~Return Match~

24歳にして突然の上咽頭癌ステージ4の宣告。その時私は〝がん患者〟になった。

闘病前夜

ほなまた関西。

2019/10/31、関西を離れる最終日。 私は暫く離れる事になる寮の一室の掃除を朝から行なっていた。 私の住む寮は築50年近くになるらしく、かなりボロい。 高度経済成長期の公営団地をイメージし、それを50年放置してもらえればそれである。 初めて庶務に案内…

紹介状

PET検査を終えた翌々日の昼、私は市民病院にいた。 当初、紹介元の市民病院の医師は「PET検査の後、一週間してから来てください。」と言っていたが、治療先を決めた以上とっとと紹介状を書いてもらわねばならなかった。 無理を聞いていただき当日に紹介状を…

会いたい人

PET検査の翌日、2019年10/29。 小っ恥ずかしいがこれは書き留めとかねばならないだろう。 その日、3年ぶりに元カノと会った。 大学時代毎日のように一緒にいたが、就職の際遠距離になったことがきっかけで別れてしまった。結局私が転職した事もあって近くに…

PET検査

目が覚める。喉が痛い…昨日のカラオケのせいだと言い聞かせる。 今日はPET検査があるので検査終了まで絶食だ。 庭に出てコーヒーを飲みながら煙草を吹かし、陽が上り始めた空を眺めていた。 腹が減った、腹が減るのも生きている事を実感する。 何度も見たは…

今日したいこと。

前の日の晩に調べたくもない事を調べたせいでろくに眠れなかった。 布団の中で今日は何をしようかと考える… 昨日調べた事が頭によぎる。 頸部リンパ節への転移の場合、外科的な手術を行えば声を失う事になるかもしれない。 そんなifを考えた時、思いついたの…

眠れぬ夜

癌宣告の翌日は土曜日だった。 意外にも私はぐっすりと寝れた。 母は目の下に大きなクマを作って全く眠れなかったと言って笑っていた。 今日はパートを休もうかと聞いてきたが、出来るだけいつも通り生活してくださいと言っておいた。 母を見送った後、妹と2…

がん宣告当日③

2時間半という時間をかけて私は故郷の駅についた。 何もない町だが、今となってはどこか眩しい。 連絡を入れていた妹が車で迎えに来てくれていた。 「どうしたの、急に。」 妹は一見ただのギャルだが、実は看護師でしっかりしている。 懐かしい町並みを窓の…

がん宣告当日②

駅へ向かって歩く。あたりはすっかり暗くなっていた。 ただ無心で歩を進めていると、見慣れた背中が街灯に照らされた。 同期の羽貫さんだ。 彼女とは定期的にベロベロに飲んだくれて、翌日は後悔する仲だ。 「よう。帰りか?」声をかける。 「あら、歩きなん…

がん宣告当日①

「びっくりすると思いますが、癌です。」 医師の一言目はそれだった。 忘れもしない2019年10月25日、私はいつものように職場で仕事をしていた。 午後3時頃、携帯に一本の電話が入った。 一週間前に生検を行った大病院からで、結果が出たからすぐに来てくださ…

がん発覚序章②

紹介された大病院でのMRI検査。 担当は知り合いの放射線技師だった。 彼が「耳中心でいいんだな。」と問う。 鼻のつまりも気になっていた私は副鼻腔も撮影してくれとお願いした。 この偶然の依頼が運命を変えることになる。 MRIの結果、読影医の所見は〝慢性…

がん発覚序章①

がん発覚の1年程前、右耳に違和感が出てきた。 水の中にいるような感覚で音も聞こえづらい。 その日すぐに町の耳鼻科に行った。 「耳垢が溜まってますね〜」と垢を取り沿いてもらったが、素人の私でもそれが原因でないことはわかる。ヤブ医者め。 案の定症状…