24歳でがんになった。~Return Match~

24歳にして突然の上咽頭癌ステージ4の宣告。その時私は〝がん患者〟になった。

12年後の月

「今日は皆既日食らしいよ」

朝、友人からメッセージが入っていた。

 

そんなもんしょっちゅうしてんだろ

など、アホなことを思いながら布団を出た。

 

 

ラジオをつけるとちょうどその話題をしており、

今回の皆既日食は地球から見て月が最も大きく見えるスーパームーンと同時に起こるとのことで、2015年ぶりの比較的珍しい現象だといっていた。

 

ふーん珍しいことなのか…

 

「おい知ってるかァ‼︎」

職場のオヤジも興奮気味だ。

皆既日食の話ですか」

見たいね見たいねとみんな盛り上がっていた。

 

そう言われるとなんだか見たくなってきたぞ、

私も流されやすい男だ。

 

仕事を終わって18時過ぎ、

外は厚い雲が空を覆っていた。

「こりゃ見えんだろなぁ」

 

早々に見切りをつけて、私は部屋にこもることにした

 

「だめ、こっちは全然見えないよ」

朝連絡をくれた友人からだった。

あいつ、こんな厚い雲なのに見にいったのか?

はなから見えないのはわかっていたじゃないか…

 

ひとりで夕飯を食いながらそんなことを思いながら返事を返す。

「あーあ折角公園まで来たのに‼︎」

 

外に出てたのかよ、ご苦労なこった。

 

レトルトのハンバーグ

ぬるい味噌汁

 

「何か刺激はないのかな」

「退屈な町だよな」

 

みんなそういう風に言うけれど、

何もないと感じるのは、自分が見ようとしないからだ。

 

残りの夕飯をかき込みコーヒーを魔法瓶入れて、

俺はカメラを持って車に乗った。

 

友人にメッセージを送る

「外に出た」

「そっちも見えないんじゃないの」

「この雲じゃ見えないだろうね」

 

久々に持ち出したカメラ

闘病中もしっかり持っていたのに、

復職してからというもの日々の生活に追われてすっかりご無沙汰していた。

 

天体にはさほど詳しくないが、

今日の空は素人目にもわかるひどい条件の空だ。

夜空は暑い雲に覆われて、星がひとつも出ていない。

はっきり言って仕舞えば今晩の月見は期待できないだろう。

 

でも、もしかしたら…

強い風が吹いて、一瞬空が晴れるかもしれない。

 

あの時夜空を見上げればよかった

あの時カメラを持って行けばよかった

 

そんな後悔をなるべく減らしたい

〝残りの人生〟というのはそういうものだと私は思っている。

 

結局30分ほど観察してみたが、

空は厚い雲に覆われたままで月の姿を見ることは出来なかった。

 

カメラはリュックに仕舞ったままで、

私のした事といえばコーヒーを飲みながら星もない夜空を見上げていただけだった。

 

「ダメだったわ」と友人にメッセージを送信する

最初からわかっていた結果だ

でも夜風を浴びれて気持ちが良かった。

 

「次同じ条件は12年後らしいよ。」

 

12年後…

私は生きてるのかな?

そんなことばかり考えてしまう。

 

でも、未来が不確かなものだというのはみんな同じだよな。

そんなことは考えても仕方のないことだ。

 

「もしかしたら死ぬ、もしかしたら生きる」

どちらにせよなるべく満足のいく生き方をしたいと思う。

 

折角田舎に引っ越したし、

今年の夏は星を撮ってみようかな。

 

ご拝読ありがとうございました。

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2020年に撮影した天の川

 

 

 

 

 

 

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