24歳でがんになった。~Return Match~

24歳にして突然の上咽頭癌ステージ4の宣告。その時私は〝がん患者〟になった。

治療後1年が経って

2020年3月11日のがん治療終了から丸1年が経った。

 

5年生存率が40〜50%と言われるうち、1年生き延びればめでたい話だ。

まる一年が経ったら記念にケーキでも食べようか。

ステーキだっていいぞ、ひとりでゆっくり温泉はどうだ。

 

そんな事を考えていたのだが、今年の3月11日は朝から朝まで仕事だった。

そういう仕事をしているのだ私は…

 

すっかり陽が登り切った頃、疲れ切った足を引きづり職場を後にする。

その日は少し曇り空だったが、久々のシャバの風は気持ちが良い。

 

仕事に向かう人々を横目に町を抜け出し、

古びた自分の部屋に帰ってきた。

 

手短にシャワーを浴びた後、僕はドカっとベッドに横たわりカーテンの隙間から機嫌の悪そうな空を眺めた…

 

「一年か」

ひとり部屋の中でつぶやく。

あの時間は何だったんだろうか、長い夢だったような気もする。

あっと言う間だったような、あまりに長かったような、何とも言えぬ不思議な気分だ。

 

手帳から写真を取り出し眺める。

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一枚はがん専門病院で治療を完遂し退院する日に病院で撮った写真で、

もう一枚はバイク事故で病院に緊急搬送された日に撮った写真だ。

コレらの写真がここ一年のうちに撮られたものであることに我ながら驚かされる。

 

がんの事を意識しない日はない。

「僕はがんになった」これからずっとこの気持ちを持ったまま生きていくだろう。

人に時々言う「一年後生きているかなんてわからないよ」と。

でも、それは僕のようながんサバイバー以外にとっても同じ話だ。

 

3月11日は僕にとってはがん治療を終えた日だが、

多くの日本国民にとっては東日本大地震の起こった日と言う認識であると思う。

 

僕にとってはその機転ががんだったが、あの震災だった人もいるだろう。

“普通の毎日”の素晴らしさ…

どこでいつそれに気付くかと言うのは人それぞれで、きっと気づかないままの人もいるだろう。

でも、なるべく早くそれに気付く方が良い人生を歩めると思う。

 

今日もご飯が美味しくて、家族とおはようのメールが出来て…

自分にとってこんなに幸せな事はない。

当たり前の毎日にはとてつもない価値があるんだ。

 

そんな事を考えているうちに、

私は夜勤明けの疲れもあってベッドの上で眠ってしまった…

 

次の日、ガタガタと揺れる窓の音で目が覚めた。

くそうボロアパートめ、少しは労ってくれてもいいだろう‼︎

 

カーテンを少し開けてはみたが、空はドヨっと曇っていて雨も降っているようだった。

休みだと思うとベッドから出る気にもならず、悪戯に時間だけが過ぎていく…

 

今日は何をしようかな…

何もする気が起きない…

今日したいこと…今日したい事…記念日‼︎お祝い‼︎

 

と言うわけでケーキを買いに行った。

アラサーのおっさんが、ひとりでケーキ屋に。

 

ショーケースの中にはいくつかのカットされたケーキが沢山並んでいたが、

私のイメージする“お祝いのケーキ”がない。

「すいません、ホールのケーキはありませんか?」

そういうとおばさまはカタログを取り出してきて丁寧に教えて下さった。

「18センチですと、コレ(カットケーキ)が8個分ですよ〜」

 

で、デカすぎる…!

でもお祝いのケーキというのはホールケーキなのだろう?それは譲れない。

 

「一番小さいホールケーキをください。」

結局、12センチのケーキを予約して帰ってきた。

 

ぶらぶらと街を徘徊した後帰宅し、

部屋の掃除をしたりして時間を潰した。

 

17時過ぎケーキを迎えにいく。

子連れで賑わう店内を申し訳なさそうに進み、それを受け取った。

ケーキを買うのなんていつぶりだろう?

 

おばちゃんに例を言ってそれを受け取った。

 

私は大事そうにそれを助手席に座らせてシートベルトをつけてあげて、

細心の注意を払いながら繊細なアクセルワークで運転し帰宅した。

 

帰宅後わくわくと箱を開けてケーキを覗いてみる

「でかいなコレ…」

素人目に見てもデカイ、4人分はある。

うーん困った…

そもそもホールケーキはひとりで食べるものではないのでは?

 

結局、近所の友人にヘルプをしたところ

一周年の瞬間に立ち会えるとは光栄だよと、仕事終わりにも関わらずに来てくれた。

 

「ひとりで食うつもりだったのかい?」

友人が笑いながらろうそくを立ててくれて、私がそれをフーッと吹き消すとコーヒーで乾杯した。

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祝 がん撲滅一周年♡

 

「豪快に半分個でしょ」友人が悪そうな笑みを浮かべながら雑にナイフでケーキを切り分ける。

「こんなに‼︎大人になるのも悪くない」

「全くだ」

 

そんな会話をしながら男ふたりでケーキを食べた。

「何かプレゼントなぁ…言っといてくれれば…」

友人はバッグを漁って、やっと見つけたスーパーの割引券をくれた。

 

くだらない話を沢山して、日付が変わる頃友人は帰っていった。

 

一年前の今日はまだ味覚が無かったはずだ。

それがホールケーキを半分も食べられるようになった。

 

私は今とても幸せだ。

 

もうすぐ一年後の経過観察でまた関東の病院に行く、毎度何もありませんようにとドキドキするが、この緊張を忘れないように日々を楽しみながら生きていきたいな。

 

久々の更新となって申し訳ございませんでした。

また経過観察の結果が出ればブログ更新させていただきます。

皆さんも良い日を過ごせますように。

 

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