24歳でがんになった。~Return Match~

24歳にして突然の上咽頭癌ステージ4の宣告。その時私は〝がん患者〟になった。

がん宣告当日②

駅へ向かって歩く。あたりはすっかり暗くなっていた。

 

ただ無心で歩を進めていると、見慣れた背中が街灯に照らされた。

同期の羽貫さんだ。

彼女とは定期的にベロベロに飲んだくれて、翌日は後悔する仲だ。

「よう。帰りか?」声をかける。

「あら、歩きなんて珍しい。飲みにでもいくの?」

「いや…ちょっとね」

件に関してまだ誰にも話していない。話すか一瞬迷ったが兄弟のような奴だ、黙っておくわけにはいかない。

 

「俺、癌が見つかって。」僕は笑いながら言う。

「えぇ⁈」

「言おうか迷ったが、誰かに話したかった…すまん…」

俺はひとりで抱えきれぬ痛みを他人に投げた。

 

沈黙。二人の足音だけが聞こえる。

「何と言ったらいいかわからないけど……飯食った?」

「え?いや、まだだけど…」

「奢るよ、今日は。」

私達は知らぬ間に駅前の定食屋の前まで来ていた。

 

羽貫さんと面を合わせて飯を食った。

食欲は無かったが、出来るだけ笑って飯を食った。

正直何を話したがあまり覚えていないが、やはりいい奴だなと思ったのだけ覚えている。

 

「見送るよ」と彼女が言った。

変わった事をされると気味が悪いよとそれを断った。

見送られたくない。

「気をつけてね。」先に彼女を見送る。

 

 

ひとりになると落ち着かない。

まともな人間が正気を保てるのか疑問だ。

私は赤玉パンチの缶を片手に2時間半の旅路へとついた。

 

酔いが廻る。音楽も聞かずに窓を眺めて、母は泣くか仕事はどうなるかなんて、くだらない事を考えていた…

 

 

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