2時間半という時間をかけて私は故郷の駅についた。
何もない町だが、今となってはどこか眩しい。
連絡を入れていた妹が車で迎えに来てくれていた。
「どうしたの、急に。」
妹は一見ただのギャルだが、実は看護師でしっかりしている。
懐かしい町並みを窓の外に眺めながら答える。
「急何だけど、癌が見つかって。」
「え‼︎…ステージは?」冷静に妹が問う。
「僕の初見じゃ、ステージ3以上にはなるかなぁ…」
「やばいなぁ」妹は笑いながら答えた。
家に帰ると母さんが迎えてくれた。
私は長旅の疲れもありそのままソファに倒れ込み、ちょこちょこと忙しそうに動き回る母を眺めていた。
暫くしてコーヒーと菓子を持って母がリビングに戻ってきた。
私もソファから起き上がり、1時間程たわいも無い会話をした。
妹はいつあの件を言うのだろうと思っていたと思う。
私はあの件を話すと母が倒れてしまうのでは無いかと気が気で無かった。
それでも、伝えるしかない。
「僕ね、上咽頭癌が見つかった。」
市民病院でもらってきた書類を見せる。
〝細胞診の結果、上咽頭と診断されました。〟と記されている。
母さんは一瞬固まって、その後「えぇ⁉︎」っと叫んだ。
母は現実を受け入れられないかもしれない。
だから、辛いと思ったがこう畳みかけた。
「生検の結果だから癌があるのは間違いない。あるものはある。」
そのまま「治る癌だよ、心配ない。」と、真っ青な顔の母を励ますように言った。
私はリンパ節転移がある以上はステージ3以上の進行癌である事を理解していた。
私とて怖かったが、目の前の母を励まさねばならない。
「お母さんね、不幸な事がない人生だなと思ってたの。平凡に幸せな人生だなって。」
「まさかあんたに行くなんて…」大粒の涙がこぼれ落ちる。
思わず私も泣いてしまった。
「母さん、癌は確率の問題だ。誰が悪いなんて事はない。ただ僕が引き当てた。」
「僕は生き延びて、自分が選ばれた意味を知りたい。」
つられて私も泣いてしまった。
でも泣くとやっぱりスッキリするもんだ。
二人でひとしきり泣いた後、自分の部屋に戻った頃には午前3時を回っていたと思う。
その日はベットに潜ると疲れがどっと出てきて、私は泥のように眠った。
こうして長い長い1日が終わった。
人生よりも長い1日だった。
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