PET検査を終えた翌々日の昼、私は市民病院にいた。
当初、紹介元の市民病院の医師は「PET検査の後、一週間してから来てください。」と言っていたが、治療先を決めた以上とっとと紹介状を書いてもらわねばならなかった。
無理を聞いていただき当日に紹介状を受け取った。
「先生、私も一週間で癌が変わらないのは解ってます。でも一患者になるとね、やっぱり一日一秒でも早く治療にかかりたいと思うもんなんです。」
そう言うと先生はコクリと頷き、「関西に戻ってきた時は必要であれば頼ってください。」と言って下さった。いい先生だった。
治療は千葉のがん専門病院で行う事にした。
地元の関西にも良いがん専門病院はあったのだが、この上咽頭癌に関しては自分の選んだ病院が圧倒的に治療実績が多いようだったからだ。
(ちなみに上咽頭癌は日本全体で年間800人と言う発生頻度が少ない癌である。)
同じ病気でガイドラインに沿っても病院によってやり方は違う。
癌専門病院かつ頸部に強く、信頼出来る病院を選んだ。
先に断っておくが、これから記すことは医療従事者としての私ではなく、患者としての私の素直な気持ちである。
「がんを治すのは患者自身」
「主役は患者」
なんて言うけれど、治療が始まると患者はまな板の上の鯉のように思う。
癌になってしまってから、自分の気持ちや行動を変えても結局メス(薬や放射線含め)を入れてもらわないと癌は治らないからだ。
そしてそのメスの握り方は医師がよく知っている。
「この持ち方でいきますよ」と一応聞いてくれるが、患者はお願いしますとしか言えないのが現実だろう。
治療が始まってしまえば患者は「必ず治す」という強い意志を持つ事と、治療完遂の為の体調管理位しか出来なくなる。
そして「必ず治す」と言う意思のためにも信頼できる病院選びは大切だ。
「ここで良かったのか」と思ってしまうと治るものも治らなくなるし、治療後後悔する原因になるだろうから。
病院選びは患者が自分で出来る最大の選択だと思う。
紹介状を貰って自ら治療先の病院に電話をした。
診察の予約が明後日の朝だった為、明日には関西を立つ事になった。
その日の晩、友人らと晩飯を食べに行った。
週1回は集まった家族のような奴らだったので、しばらくこの顔を見れないと思うととても寂しかった。
その後バイクに乗って、バイク仲間のガレージに行った。
ガレージには多くのバイク仲間が集ってくれていた。基本的にバイク乗りはポジティブな人が多いように思う。ガレージで駄弁りたくさん励ましてもらって元気をもらった。
「じゃあまた‼︎」仲間に見送られ出発する。
その晩は風が冷たく月が綺麗だった。
ライトに照らされたリフレクターがカーブを示し、それを目で追う。
バイクにしがみつきアクセルを開く、辺りには自分のバイクの排気音だけが響く。
その瞬間だけは何も考えなくて良かった。
治療が長引く可能性も考えてそのバイクは手放す事にしていたが、「絶対にまたバイクに乗ろう」と思わせてくれた20分のツーリングだった。
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